地磁気と渡り鳥

 渡り鳥がどうやって方角を知るのか、今のところ確かなことはわからない。これに関して、ある実験家が、地磁気説を検証しようと、鳥の頭に強力な磁石をつけて磁場の感覚を狂わせるとどうなるかという実験を行った。その結果、その鳥は影響を受けず、ちゃんと方角を知ることができた。このことから、「地磁気説は間違いだ」とメディアは報じた。
 だが、この結論は強引すぎると思う。なぜなら、この実験では、地磁気のクーロン力の感知を妨害することはできても、地磁気を横切る際に生じるローレンツ力の感知までは妨害できないからである。
 私は、今でも、地磁気説を支持している。ただし、従来考えられてきたように、クーロン力を感知するのではなく、ローレンツ力を感知するという説を主張するものである。地磁気のクーロン力を検出できるほど、生物が磁気に敏感だとは思えない。実際、そうした磁気を感知する特別な器官は、まだ発見されていない。これに対し、地磁気を横切る際に発生するローレンツ力(による起電力)を感知するのには、特別な器官を必要としない。
 そういえば、鳥たちはしばしば(群をなして)、同じところをぐるぐると何度も旋回していることがある。ひょっとしたら、あれは、方角を知るために、地磁気を横切ってローレンツ力を感じ取ろうとしているのかもしれない。同じところをぐるぐる飛び回れば、ローレンツ力の向きと大きさが周期的に変わるので、その位相から方角がわかることになる。
 ミツバチのダンスも、これと同じ原理であると私は考える。

 

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