転生と霊媒術について - 人格複製現象

 ある物(立体)を複製しようとする場合、まず、それから型をとり、その型から複製を作る。つまり、型ができれば、複製が作れるというわけである。
 同じことは、物体のような形ある物だけでなく、人格のような形の無い物にも言える。つまり、型となるものがあれば、人格の複製ができる。言い換えれば、そっくりの人格を持つ人間が作られるということだ。具体的に言えば、これにより『転生』や『霊媒術』といった超常現象が、科学の常識の範囲で説明できることになる。
 こうした人格複製の場合、『型』の役割を果たすのは、周囲の人間たちである。まずは、『転生』を例にとって説明しよう。

 昔、あるところに、A氏という人物がいたとする。このA氏は、その一族、あるいは、その地方で、偉大な存在であった。そのため、死後も、多くの人たちから尊敬され、崇められていた。それだけの人物であったから、その一族(地方)の人たちの間では、A氏のことは、長く語り継がれることになる。当然、A氏が他界した後に生まれた世代の子供たちにも、A氏のことは語り継がれる。
 その話を聞かされた子供たちの中に、A氏に憧れてしまった子(B君)がいたとする。その子は、A氏の様な人間になりたいと思う。
 一方、A氏のことを慕う大人たちは、A氏のような人物の出現を期待している。その大人たちが、B君を見たら、どう思うだろうか?
 恐らく、『この子は、A氏の様な立派な人物になるかもしれない』と思うだろう。
 すると周囲の大人たちは、B君をA氏の様な人間に育てようとする。そして、A氏の話をより多く聞かせるようになる。すると、A氏の情報・知識をより多く得たB君は、ますます、A氏に似てくる。
 子供というものは、純真で、まだ人格が形成されきっていないから、情操する(人格を吹き込む)のは容易である。
 それを見た大人たちは、ますます上機嫌になり、『A氏の様な立派な人間になりなさい』と説教し、A氏に関する知識や情報をより詳しく教え、溺愛するようになる。そのことで、B君は嬉しくなり、以前にも増して、A氏の様な人間を目指す様になる。
 すると、大人たちは、もっと上機嫌になり…、といったことが、繰り返されることになる。
 そうしているうちに、B君はすっかりA氏になりきってしまう。
 その様を見て、大人たちは、『ひょっとして、この子はA氏の生まれ変わりなのではないか?』と、勘違いしはじめる。その噂は、瞬く間に広まり、いつの間にか事実として定着してしまうのだ。
 この例でもおわかりのように、A氏の人格複製の型になったのは、A氏のことを知るB君のまわりの人間(大人)たちである。
 大人という生き物は、以外とバカな生き物である。自分(たち)で人格を吹き込んでおきながら、それを忘れてしまうのである。こうした健忘症は、決して珍しくない。自分の言ったことを覚えていない大人は、たくさんいる。特に、子どもに話したことは、覚えていないことが多い。
 また、自分が教えなくても、自分の兄弟や親や親戚や知り合いといった人たちが、自分の子どもに故人に関する話しを聞かせている場合もある。
 さらに、自分が他の人と、故人について話しをしているのを、子どもが聞いていたという場合もある。大人が知らないうちに…。
 大人が人格を吹き込まなくても、人格複製は起こる。A氏を慕う大人たちは、A氏と似たところがあるものである。たとえ彼らがどんなに個性的であっても、A氏的な部分を有しているという共通点があるのである。こういう環境に置かれれば、子供はA氏的な影響を最も強く大人たちから受けることになる。また、A氏的な部分、すなわち周囲の大人たちに共通する部分を受け入れる(真似る)ことにより、子供はより多くの大人たちから愛される立場に自分を置くことができる。大人という生き物は、自分と似た子供を可愛がりたがる生き物なのだ。
 『転生』という噂は、大人の子どもに対する無知から来る場合が、ほとんどなのだ。上の例でも、B君がA氏の様な人格を持つようになったのは、そのような環境に置かれたからである。人格は、その人の置かれた環境に、大きく左右されるものなのである。そして、その環境を作り出しているのが、周囲の人間たちなのだ。

 さて次に、『霊媒術』について説明しよう。この場合、人格複製の『型』となるのは、霊媒師のところにやって来る『相談者』なのである。相談者は、故人に関する知識や情報を有している。霊媒師は、儀式の前の会話で、ある程度それらを得ることができる。
 また、経験豊かな霊媒師たちは、人間というものをよく知っている。そのため、直接会話をしなくても、相談者の雰囲気や人柄から、故人の特徴を知ることができるのだ。というのも、相談者の人格というものが、故人からの影響を受けているからである。
 増して、相談者が故人の肉親となれば、その影響度は絶大なものがあるだろう。別に霊媒師でなくても、『子を見りゃ親がわかる』というのがある。他人から見るほど、肉親というものは良く似ているものだ。
 つまり、霊媒師たちは、相談者を媒体にして故人の人格を知り、そして故人を演じるのである。ついでに言うと、霊媒師たちが故人になりきるためには、正気でいるよりも、トランス状態になった方がやりやすいのだ。

 このように、人間というものは、無意識の内に、故人の人格を伝える媒体になってしまうことがよくあるのである。こうした様は、私が提唱している『仮想力線電磁気学』における『疑似エーテル』という概念と良く似ている。
 いずれにせよ、ここで認識しなければならないのは、この世の全ての物は互いに関連しあっているということだ。つまり、局所性とか孤立系などというものは、悲現実的な妄想に過ぎないということである。

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