・遠隔作用の特徴

 すでに述べたように、仮想力線電磁気学は、遠隔作用の理論である。それ故、次のよう
な特徴を持つ。

 まず、作用を伝えるための媒体、すなわち、エーテルが不要である。仮想力線電磁気学
は、エーテル否定の立場をとっている。
 エーテルが存在しないので、運動の相対性が満たされることになる。
 こうした特徴は、マイケルソン・モーレーの実験結果と良く一致している。

 次に、遠隔作用であることから、『場』や『力線』は仮想的なものとして扱われる。特
に、磁場の変動や運動によって誘導される電場は、仮想的な存在ですらない。この電場は、
それによって作用を受けるもの(電荷)があって、始めて意味のあるものとなる。
 こうした考え方は、『場』というものが、単位電荷(または単位磁荷)あたりに働く力
にすぎないという考え方に基づいている。

 もう一つの特徴は、原則的には、重ね合わせの理は成り立たないということである。
 もちろん、巨視的な静的つりあいの問題などでは、結果的に成り立つ場合もあるが、通
常は成り立たない。
 これは、言い換えれば、起源(わき出し)の異なる力線は独立で、別々に扱わなければ
ならないということだ。したがって、起源(わき出し)の異なる力線どうしが交わること
もある。(ただし、起源(わき出し)を同じくする力線どうしは、交わらない。)
 こうした特徴は、遠隔作用では媒体が存在しないこと、つまり作用が相手方にダイレク
トに働くことに由来する。

 こうしてみると、同じ力線の理論でも、ファラデーの力線の理論とはかなり異なるとこ
ろがあることに気付くだろう。

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