第2章 力線の理論

・電磁誘導

 マックスウェル電磁気学は、ファラデーの力線の理論をある程度、基にしている。その
ため、マックスウェル方程式には、ファラデーの力線の理論と共通する部分がある。
 実際、四本の方程式のうち、静的な電磁場に関する二本の式、

  div = ρ       (3・1)

  div = 0       (3・2)

は、ファラデーの力線の理論をそのまま応用したものだ。
 しかし、残る二本の式、

  rot = −(∂/∂t)      (3・3)

  rot = (∂/∂t)+     (3・4)

すなわち、電磁場の誘導の式は、ファラデーの力線の理論とは異なっている。
 だが、(3・3)式と(3・4)式は、ファラデーの力線の理論から導くことができる
のである。このためには、次に述べる『力線の連続の式』が必要になるが、ここではまず、
言葉で考え方を説明しよう。

 ファラデーの力線の理論は、こうである。
 磁力線を横切ると、磁力線の運動方向と、磁力線の双方に垂直な向きに電場が生じる。
これが(2・1)式の意味するところである。
 また、電気力線を横切ると、電気力線の運動方向と、電気力線の双方に垂直な向きに磁
場が生じる。これが(2・2)式の意味するところである。

 一方、マックスウェル方程式は、こうである。
 ある微小領域の磁場が変動すると、その周囲に環状に電場が生じる。これが(3・3)
式の意味するところである。
 また、ある微小領域の電場が変動すると、その周囲に環状に磁場が生じる。さらに、電
流が流れても、同じように磁場が生じる。これが(3・4)式の意味するところである。

 さて、ある微小領域の磁場(電場)が変動するということは、磁力線(電気力線)の本
数が増減するということである。そしてそのためには、微小領域から磁力線(電気力線)
が出入りすることになる。すると、微小領域の境界線上で、磁力線(電気力線)が横切る
ことになる。すると、ファラデーの力線の理論から、電場(磁場)が生じることになる。
 また、電流は電荷の流れである。電荷が動けば、電気力線が横切ることになり、磁場が
生じることになる。
 以上のことから、(3・3)式と(3・4)式は、ファラデーの力線の理論によって説
明できることが、おわかりいただけただろう。

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