・電磁誘導
マックスウェル電磁気学は、ファラデーの力線の理論をある程度、基にしている。その ため、マックスウェル方程式には、ファラデーの力線の理論と共通する部分がある。 実際、四本の方程式のうち、静的な電磁場に関する二本の式、 divD = ρ (3・1) divB = 0 (3・2) は、ファラデーの力線の理論をそのまま応用したものだ。 しかし、残る二本の式、 rotE = −(∂B/∂t) (3・3) rotH = (∂D/∂t)+j (3・4) すなわち、電磁場の誘導の式は、ファラデーの力線の理論とは異なっている。 だが、(3・3)式と(3・4)式は、ファラデーの力線の理論から導くことができる のである。このためには、次に述べる『力線の連続の式』が必要になるが、ここではまず、 言葉で考え方を説明しよう。 ファラデーの力線の理論は、こうである。 磁力線を横切ると、磁力線の運動方向と、磁力線の双方に垂直な向きに電場が生じる。 これが(2・1)式の意味するところである。 また、電気力線を横切ると、電気力線の運動方向と、電気力線の双方に垂直な向きに磁 場が生じる。これが(2・2)式の意味するところである。 一方、マックスウェル方程式は、こうである。 ある微小領域の磁場が変動すると、その周囲に環状に電場が生じる。これが(3・3) 式の意味するところである。 また、ある微小領域の電場が変動すると、その周囲に環状に磁場が生じる。さらに、電 流が流れても、同じように磁場が生じる。これが(3・4)式の意味するところである。 さて、ある微小領域の磁場(電場)が変動するということは、磁力線(電気力線)の本 数が増減するということである。そしてそのためには、微小領域から磁力線(電気力線) が出入りすることになる。すると、微小領域の境界線上で、磁力線(電気力線)が横切る ことになる。すると、ファラデーの力線の理論から、電場(磁場)が生じることになる。 また、電流は電荷の流れである。電荷が動けば、電気力線が横切ることになり、磁場が 生じることになる。 以上のことから、(3・3)式と(3・4)式は、ファラデーの力線の理論によって説 明できることが、おわかりいただけただろう。