・電極板の温度上昇
クーロン力を及ぼし合う物どうしが相対運動すると、クーロン力とは反対の力が働く。 その力は、速度が大きいほど大きく、光速度でクーロン力と等しくなる。気付かなければ ならないのは、この力は、加速の場合だけでなく、減速の場合にも働くということである。 つまり、速度が大きくなるほど、止まりにくくなるのである。 このことに関連する実験として、電極板の温度上昇がある。加速した荷電粒子を電極板 で吸収し、その電極の温度上昇を調べるという実験である。 この実験について、一つ知っておかねばならないことがある。それは、『制動波』であ る。荷電粒子が静止(減速)する時、電磁波が放出されるが、これを制動波という。この 制動波という電磁波(のエネルギー)を放出することで、荷電粒子は運動エネルギーを失 う(減速・静止する)ことができるのだ。そして、荷電粒子を吸収する電極板の温度が上 昇するのも、電極板が、この制動波を吸収するからなのである。 さて、問題の実験だが、速度が遅いときは、先に述べた『クーロン力と反対の力』は小 さいので、荷電粒子はすぐに止まることができる。つまり、電極板の表面近くで静止する ことができる。このため、制動波の大部分は電極板の外に放出される。ところが、速度が 大きくなると『クーロン力と反対の力』が大きくなるため、制動力は弱められてしまい、 荷電粒子はなかなか静止することができない。それ故、荷電粒子は電極板の深いところま で入り込むことになる。このため、放出した制動波の大部分は電極板の外部に放出されず に、電極板自身に吸収されることになる。したがって、荷電粒子が有していた運動エネル ギー(すなわち制動により失われた運動エネルギー)以上に電極板の温度が上昇すること になる。このことは、実験により証明されている。 マックスウェル電磁気学では、この、力線の理論では説明できる『相対運動によって誘 導される、クーロン力と反対の力』が、説明できない。このため、これまで述べたような 現象は、ニュートン力学では説明がつかず、それ故、『運動によって質量が増加する』な どという荒唐無稽な仮説が必要になるのである。