・マックスウェル方程式の導出
さて、すでに述べた力線の連続の式と、(2・1)〜(2・4)式とから、マックスウ ェル方程式が導かれることになる。全部を記述すると膨大な量になるので、ここでは一部 だけを記述しよう。(他の式も同じように導ける)。 まず、(2・2)式から、 Hex = vey・Dz − vez・Dy Hey = vez・Dx − vex・Dz よって、 vey = (Hx − vez・Dy)/Dz vex = (vez・Dx − Hy)/Dz これらを(4・3)式に代入し、さらに(2・3)式を考慮して整理すると、 ∂Dz/∂t = (∂Hy/∂x)−(∂Hx/∂y) −(∂vez/∂x)・Dx − vez・(∂Dx/∂x) +(∂vez/∂y)・Dy + vez・(∂Dy/∂y) 微小領域であることを考慮すると、 (∂vez/∂x)=0 (∂Dx/∂x)=0 (∂vez/∂y)=0 (∂Dy/∂y)=0 となるから、 ∂Dz/∂t = (∂Hy/∂x)−(∂Hx/∂y) これと同様の計算を行うと、最終的に、 rotE = −(∂B/∂t) rotH = (∂D/∂t) という式が得られる。これらは、マックスウェル方程式の(3・3)式と、(3・4)式 の前半(左辺と右辺第一項の関係式)そのものである。 一方、(3・4)式の後半、すなわち、 rotH = j については、(2・2)式と(3・1)式、そして、 j = ρv という関係式を用いれば、導くことができる。 以上のことから、マックスウェル方程式が力線の理論から導けることが、おわかりにな ったと思う。 力線の理論からマックスウェル方程式が導けるということは、電磁気学のもっとも基本 となる法則が、マックスウェル方程式ではなく、力線の理論であるということである。 自然数の四則計算にたとえるならば、マックスウェル方程式と力線の理論の関係は、『 足し算』と『かけ算』の関係によく似ている。足し算によってかけ算を表現することはで きるが、かけ算によって足し算を表現することはできない。 全く同じことが、力線の理論とマックスウェル方程式の間にもいえる。マックスウェル 方程式で解ける問題は、力線の理論を用いても解ける。だが、力線の理論を用いて解ける 問題が、マックスウェル方程式を用いて解けるとは限らない。 たとえば、ローレンツ力が良い例である。ローレンツ力は、力線の理論によって容易に 説明できるが、マックスウェル方程式では解けない。こうした問題は、他にもたくさんあ る。力線の理論に比べると、マックスウェル方程式は、解ける問題が限られている。こう した理論の限界を考えずに乱用すると、全く誤った結論に至ることになる。 マックスウェル方程式を絶対視すると相対論でしか説明できなかったことの多くが、力 線の理論を用いると電磁気学的現象として説明できてしまうのである。以後の部分で、そ のことを一つずつ解明していくことにしよう。