・動体流と光速度
近接作用理論であるマックスウェル電磁気学は、空間における物質の分布が連続である ことを前提としている。ところが、実際には、素粒子のスケールで見ればおわかりのよう に、その条件は全く満たされていない。したがって、マックスウェル電磁気学は、やはり 欠陥のある理論といわざるを得ない。 特に、物質中の誘電率・透磁率・屈折率が、真空中でのそれらと異なることは、全く説 明がつかない。肉眼で見ると密に見える物質も、その物質を構成している素粒子どうしは 全く隔たっている。つまり、物質はスカスカで、物質の実体が占める割合はほんのごく僅 かなのだ。したがって、物質中を通ろうとする光の大部分は、そのまま素通りしてしまう。 そのため、光の速度は変化しないことになる。無論、これは事実に反している。したがっ て、このことから、マックスウェル電磁気学は欠陥のある理論といわざるを得ないのであ る。 その点、遠隔作用理論である仮想力線電磁気学は、物質中の光の速度(誘電率・透磁率 ・屈折率)が、真空のそれらと異なることが説明できる。 遠隔作用では、作用を及ぼし合う物体間を結ぶ線分上以外の場所の物質の分布も、誘電 率・透磁率に関与してくる。つまり、光の進路上以外の物質も、屈折率に関与してくる。 このため、光の進路の周囲にある物質を構成する素粒子が、疑似エーテルとして、誘電率 ・透磁率・屈折率に関与し、真空中とは異なる値にさせてしまうのだ。 このように、遠隔作用は、『作用を及ぼし合う物体間を結ぶ線分上以外の場所の物質の 分布も、誘電率・透磁率に関与してくる』という特徴があるため、ここで述べたような微 視的な問題から、先に述べた赤方偏移のような巨視的な問題まで、あらゆるスケールの問 題が統一的に説明できるのである。 さて次に、運動する物質中を通る光の速度について考えよう。 すでに述べたように、物質の実体が空間に占める割合はごくわずかである。したがって、 物質が運動しても空間全体が動くわけではなく、空間のごく一部を占めるにすぎない素粒 子たちが動くにすぎない。したがって、物質の運動による光速度の変化(いわゆる引きず り効果)が、物質の運動速度を単純に加算した値よりもずっと小さな値になるのは、当然 のことなのだ。 引きずり効果をもたらすのは、物質を構成している素粒子だが、まず、その疑似エーテ ルとしての電磁気作用への関与の度合いを求める。まず、誘電率については、 {(1/ε0)−(1/ε)}/(1/ε0) よって、 1−(ε0/ε) 同様に、透磁率については、 1−(μ0/μ) 電磁波(光)の場合は、誘電率と透磁率の両方を考えて 1−{(ε0・μ0)/(ε・μ)} したがって、引きずりは、 [1−{(ε0・μ0)/(ε・μ)}]・v ここで、 {(ε0・μ0)/(ε・μ)}=(1/n2) であるから、 {1−(1/n2)}・v となって、フレネルの式に一致する。 このように、仮想力線電磁気学は、動流体の引きずり効果も、電磁気学的現象として説 明できるのである。 この他にも、次のようなことが説明できる。 まず、マイケルソン・モーレーの実験について見てみよう。疑似エーテルとして最も関 与するのは、光の進路により近い物体である。この実験の場合、近い順からいうと、実験 装置内の空気、実験装置、実験装置の台、実験室、大地(地球)、…となるだろう。そし て、光の進路に近い物体は、実験装置に対して静止している。したがって、疑似エーテル は、ほぼ静止していると見てよい。だから、光速度(干渉縞)の変化が検出できなかった のである。 ひょっとすると、実験装置を十分高所に置き、実験装置の周りをできるだけ透明にすれ ば、地球上の物体の疑似エーテルへの関与が小さくなり、ミラーが主張したような光速度 の変化が得られるかもしれない。 もっとも、そんなことをしなくても、サニャック効果をみれば、それが周囲の物体の疑 似エーテルへの関与によるものであることは、すぐにわかるだろう。 もう一つ、運動する光源から発せられる光速度を測定しようとすると、常にcになるこ とも説明できる。光が装置内にはいると、装置自身が疑似エーテルとなるので、光の速度 はcになるのである。