1.4.2 エーテルと近接作用

 マイケルソン・モーレーの実験は、エーテルの存在を否定した実験であって、ニュート
ン力学の矛盾を示した実験などではない。
 さて、エーテルが否定されたということは、『光=波動説』が間違っていたということ
である。と同時に、『近接作用』という考え方が間違いであることの証拠となる。なぜな
ら、近接作用という考え方が成り立つためには、作用を伝えるための媒体(=エーテル)
が必要だからである。これは言い換えれば、電磁気作用は実は『遠隔作用』だったという
ことだ。
 ここで『近接作用』と『遠隔作用』の違いを簡単に触れておこう。両者の違いは、作用
(または力)の伝わり方の違いにある。
 『近接作用』の場合、作用は有限の速度で伝わっていく。しかし、それ以上に重要なの
は、作用が伝わるためには、作用を伝える媒体が必要となるという点にある。したがって、
『真空』のように作用を伝えるもののない空間では、作用は伝わらない。エーテルという
ものの存在が信じられていたのは、そのためだ。
 一方、『遠隔作用』の場合は、作用を伝えるものを必要としない。作用は空間を飛び越
えてダイレクトに働く。このため、作用が速度無限大で伝わる。つまり、作用が伝わるの
に必要な所要時間がゼロなのである。
 遠隔作用の問題では、『作用を及ぼすもの』と『作用を受けるもの』だけが関わってく
る。ところが、近接作用の問題では、これら二つに加えて、『作用を伝えるも=媒体=エ
ーテル』も関わってくるのである。このため、『作用を伝えるも=媒体=エーテル』の運
動が、作用の伝わり方に影響してくることになる。マイケルソン・モーレーの実験は、ま
さにこの影響を調べる実験だったのである。遠隔作用の場合は、もともと媒体の存在を必
要としないので、マイケルソン・モーレーの実験で光速度の変化が検出できなくて当然な
のだ。
 こうしてみると、電磁気作用は遠隔作用であると考えた方が、はるかに合理的であるこ
とがわかるだろう。
 大変奇妙なことに、アインシュタインは熱狂的な近接作用信者だったにもかかわらず、
エーテルの存在を否定してしまったのである。何度も言うように、エーテルは近接作用に
は欠かせないものである。アインシュタインは、近接作用を前提に相対論を構築しておき
ながら、近接作用の前提となるものを否定してしまったのである。これは全く精神分裂症
的と言わざるを得ない。

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