1.5.2 周転円との類似

 アインシュタインが一般相対性理論において提唱した『曲がった時空』という考え方は、
中世の暗黒時代に絶対視されていた天動説における『導円』や『周転円』の考え方とよく
似ている。どちらも、『何かに沿って進む』という点では、全く同じである。
 ようするに、アインシュタインは、『真円の軌道(の組み合わせ)』を『へこんだシー
ト』に置き換えただけなのだ。『曲がった時空』は、『導円』や『周転円』の化身にすぎ
ない。
 もちろん、真円の組み合わせよりは、時空の曲がりの方が、数学上の扱いはずっと複雑
・高度になる。多くの人たちが、この数学上の差に目が眩んで、事の本質を捕らえ損なっ
ている。
 それはそうと、『周転円』で忘れてはならないのは、その反証不可能性である。天動説
が誤りであることは、今さら説明するまでもないだろう。だが、天動説はどのようにして
反証されたのだろうか?
 この質問を突きつけられたとき、ほとんどすべての人が言葉に詰まるだろう。事実、天
動説を反証した実験・観測事実は無いのである。
 これは極めて重要なことである。つまり、実験や観測が必ずしも間違った学説を反証で
きるとは限らないということなのだ。では、なぜ天動説は実験や観測によって反証できな
いのか?
 その原因となるのが、『周転円』なのである。たとえば、いま、天動説に矛盾する観測
データが得られたとしよう。すると、信者たちは、天体の動きが観測データに合うように、
天体の軌道に周転円を書き加える。これにより、理論と観測の間の不一致は解消される。
これが、観測によって天動説を反証できない理由である。つまり、周転円が実験事実との
矛盾を吸収してくれるわけである。
 つまり、こうだ。
「天動説は絶対に正しい。天動説が間違っているはずなど有り得ない。だが、得られた観
測データは天動説に合わない。だから、この不一致を解消するために、周転円が必要であ
る。この周転円の存在によって、天動説の正しさが証明されるのである。」
 このように、周転円の根拠は天動説にあり、その周転円によって天動説の正しさが証明
されるというわけなのである。これは、全く空虚な循環である。だが、こうした空虚な循
環が、実は、科学の世界には蔓延りやすいのである。
 事実、相対論は、その論理からして周転円的循環に満ちあふれている。そして、どんな
実験・観測結果も、相対論に都合のいいように解釈されてしまう。そうした実態の氷山の
一角を、次に述べることにしよう。

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