1.5.3 半演繹的半帰納的

 ニュートンの万有引力の法則であれ、アインシュタイン相対論の重力理論であれ、重力
係数Gは、ともに定数とされている。だが、実験・観測という立場からは、それほど確証
されたものではないという。もっとも、ここでは、重力係数が定数なのか、否か、という
問題には触れない。むしろ問題なのは、重力係数Gが定数であるとする理論上の根拠は何
かということだ。
 ニュートンの万有引力の法則では、多くの実験・観測データから、定数とされた。これ
に対して、アインシュタイン相対論の重力理論では、アインシュタインが勝手に定数と決
めつけたのである。
 これは、理論がどのようにして作られたかということを知る上で、極めて重要である。
 ニュートンの万有引力の法則は、実験・観測データから、『帰納』によって作られた。
 これに対し、アインシュタイン相対論の重力理論は、定説によれば、アインシュタイン
が考え出した原理から、『演繹』によって作られたとされている。
 よく、異端論者の中には、「相対論は、演繹によって作られた理論だから、インチキだ
!」という人がいるが、これは言い過ぎである。演繹によっているからというだけで、イ
ンチキ呼ばわりするのは、賢明ではない。まぐれ当たりということも、無いわけではない
のだから。
 むしろ問題にしなければならないのは、一般相対性理論が、本当に演繹のルールにきち
んと則って作られているのかということなのだ。
 アインシュタインは、『光速度不変の原理』、『等価原理』、『一般相対性原理』とい
う三つの原理から一般相対性理論を構築し、有名な重力方程式を導いたとされている。だ
が、現実には、(たとえどんな数学を用いようとも)、先の三つの原理だけからは、重力
方程式を導くことはできない。では、どうやって導いたかというと、先の三つの原理に加
えて、『近似的にニュートンの万有引力の法則に等しくなる』ことを補助原理として、重
力方程式を導いたのである。
 だが、これは演繹のルールに反したやり方である。なぜなら、『近似的にニュートンの
万有引力の法則に等しくなる』という補助原理は、当初の前提には含まれていないからで
ある。しかもこの補助原理は、帰納的に導かれたものである。おまけに、ニュートンの万
有引力の法則は、すでに述べたように、帰納によって作られた理論である。
 つまり、アインシュタインは、表向きは演繹の立場をとりながら、実際には、演繹と帰
納をごっちゃに用いるという、まったく一貫性の無いやり方で、理論を構築しているので
ある。こうしたやり方を、私は、『半演繹的半帰納的論法』と呼んでいる。
 半演繹的半帰納的論法は、こうである。まず、おかしな原理をでっち上げ、それを土台
にして、理論の骨格を作る。ここまでが演繹的な部分である。次に、実験・観測事実から
帰納的に理論の肉付けを行っていく。こうして、事実と矛盾しない完璧な(?)理論が出
来上がる。
 半演繹的半帰納的論法によって作られた理論は、反証不可能である。なぜなら、前提と
なる原理や、理論の骨格が間違っていても、帰納的な部分が実験・観測事実との矛盾を吸
収してしまうからである。たとえ、新たな実験・観測事実との不一致が生じても、帰納的
な部分を補完することで、矛盾は解消される。相対論信者たちが、「相対論は、実験や観
測により、余すところ無く確証されている」と自信たっぷりにほざくことができるのは、
このためだ。
 こうしてみると、相対論は反証不可能であることがわかるだろう。いうまでもなく、反
証不可能性は、疑似科学の特徴の一つである。
 いずれにせよ、アインシュタインが重力方程式を導けたのは、ニュートンの万有引力の
法則を知っていたからにほかならない。もし、ニュートンの万有引力の法則が無かったら、
アインシュタインは決して重力方程式を導くことはできなかっただろう。
 重要なのは、(時空の曲がりといった)一般相対性理論の考え方から、どうやって、近
似的にニュートンの万有引力の法則に等しくなる方程式が得られたのかということだろう。
近似的にニュートンの万有引力の法則に等しくなるように理論を作れば、近似的にニュー
トンの万有引力の法則に等しくなる理論が出来上がるのは、当たり前のことである。よう
するに、アインシュタインは、最初から答えを知っていたから、理論を構築できたのであ
る。
 現代において、ニュートンの万有引力の法則を批判する人は、まずいない。それ故、そ
れを補助原理とすることが、演繹のルールに反していることを、誰も見抜けないのである。
ニュートンの万有引力の法則に対する世間の信用につけ込むニセ科学に、騙されてはなら
ない。

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