・疑似近接作用
仮想力線電磁気学は遠隔作用の理論だが、世の中には電磁波(光)のように近接作用的 な電磁気現象が存在する。仮想力線電磁気学では、『疑似近接作用』という考え方によっ て、近接作用的な現象を説明することができる。 疑似近接作用とは、簡単に言えば、近接作用は遠隔作用の近似にすぎないということで ある。つまり、本当は遠隔作用なのだが、巨視的には近接作用のように見えるということ だ。 なぜそのようなことが起こるか? 詳しくは第3章で説明するとして、今は、多体系の 問題では、こうしたことが起こるとだけ説明しておこう。どうして多体系の問題になるの かというと、物質というものは、無数の電荷を有する素粒子からなっているからだ。しか も、近接作用理論であるマックスウェル電磁気学が、光の通り道上の物質の分布しか考え なくてよいのに対し、遠隔作用理論である仮想力線電磁気学では、全空間の物質の分布を 考えなくてはならないので、こういうことになるのである。 いずれにせよ、第3章と第4章を読めば、謎は解明されるだろう。 とにかく、近接作用的現象は遠隔作用によって説明できるのである。したがって、巨視 的な問題だけを考えるのなら、仮想力線電磁気学は、ファラデーの理論とほとんど変わら ない。そこで、まず、次の第2章では、ファラデーの力線の理論(の応用)について説明 しよう。