・太陽の近くでの光の曲がり
まず、下図のような問題を考えよう。 マックスウェル電磁気学では、誘電率や透磁率は局所的である。このため、線分AB上の 誘電率・透磁率は、太陽の有無に関係なく、線分AB上の物質の分布だけで決まる。しか も、マックスウェル電磁気学では、光は線分AB上の誘電率・透磁率の影響しか受けない。 したがって、光の進路上にはない太陽は、光の進路に何の影響も及ぼさない。このため、 太陽の有無に関係なく、光は線分AB上を直進することになる。つまり、光は曲がらない という結論を得る。 これに対し、遠隔作用理論の仮想力線電磁気学では、誘電率・透磁率は非局所的であり、 全空間の全物質の分布の影響を受ける。したがって、光の進路上にない物質、すなわち、 太陽が、光の進路に影響を及ぼすことになる。具体的には、光はCの方へ曲げられる。 この問題をわかりやすく直感的に説明すると、次のようになる。まず、下図を御覧いた だきたい。 これは、磁石からのびた磁力線を描いたものである。そこで次に、下図のように、鉄片を 近づけてみる。 すると、磁力線が鉄片のある方へ曲げられることになる。これはあたかも、鉄片によって 空間が曲げられたかのようである。これは静磁場の話だが、同じことが、静電場、さらに は電磁波のような動的な電磁場にもいえるのである。光が太陽によって曲げられるのも、 実は、これと同じ電磁気現象なのである。このように、仮想力線電磁気学では、太陽の近 くでの光の曲がりを、電磁気現象として説明できるのである。 すでに述べたように、仮想エーテルによる疑似近接作用の近似は、比較的近い周囲の空 間が均一・対称である場合に限られる。そうでない場合、単純な近似はできない。その理 由は、何度もいっているように、光の進路上にない物質も、電磁気作用に干渉するからで ある。したがって、太陽が光の進路に近いと、疑似近接作用的な近似ができない。したが って、マックスウェル電磁気学(による近似)が成り立たなくなる。よって、太陽の近く での光の曲がりは、仮想力線電磁気学では説明できるが、マックスウェル電磁気学では説 明がつかないことになる。そのため、『時空の曲がり』などという荒唐無稽な仮説に頼ら ざるを得なくなるのである。